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院長雑感

手さぐり鍼灸記4「TPPとストレスと手根管症候群」

手根管症候群という疾病がある。手首の手のひら側にある手根管の中を通る神経が圧迫されて痛みやシビレが起こる症状である。鍼灸が得意とする症状のひとつといえる。

手根管症候群といえば二人のご婦人の患者さんが続けてこられた。

ひとりの方は60代のご婦人。はじめは膝痛の治療でいらした。韓流ドラマのファンで、何人かのお仲間で韓国語を習っているという。近々みんなで韓国旅行を計画しているのだが、膝が痛くて歩くのがつらい。旅先で皆に迷惑をかけるのでは心苦しい。鍼灸がいいと聞いたので何とかならないかということだった。

東洋医学は全身治療を旨とする。問診をして、さらに気血の流れを診ていくと肝と胆の気の流れに異常を感じた。それをお話すると、お酒の飲みすぎでしょうかと少し顔を赤らめられた。いやそれだけではなく、肝は神経とも深い関わりがあるので、ストレスなども影響するのですと説明した。そういうものなのですかと今度は不思議そうな顔をされる。

まずは膝の治療と、ストレスの治療を行なった。とりあえずは、週一のペースで通っていただくことにした。針治療が合っていたのか、膝の痛みは1回目の治療でかなり楽になり、2回目でほとんど無くなった。鍼灸の治療を信用していただけたらしく3回目に来られた時に、実はもうひとつ・・という話になった。

長い間手の指のシビレで悩んでいる。手根管症候群だと思う。お医者さんにいったがなかなかよくならない。他にもいろいろためしたが一向に埒が明かない。半ばあきらめていたのだが、膝が治ったのだからもしかして治るかもと思って・・。
いつもの全身治療をして、手首と指に鍼とお灸の治療を行なうことにした。

翌週、私の顔を見るなり、すごい、すごい、の連発。手の症状がすっかり治ったという。あんなに長い間悩まされていたのに、と大変な喜びよう。こんなに喜んでもらえるとはまさに鍼灸師冥利に尽きるのだが、私が行なったのはオーソドックスな手根管症候群の治療であり、正直こちらがあっけに取られてしまった。あえて言えば、全身治療で肝胆の気血の流れを治療したのが功を奏したのかもと思った。針治療というものは上手くいくときはびっくりするほど上手くいく。上手くいかないときは何をやっても上手くいかない。実に悩ましいものである。多分に自分の未熟ゆえだとも思うのだが・・・。

もうひとりSの患者さんは介護士をしているという50代のご婦人。手根管症候群の診断で外科手術をすすめられたという。手術をすれば、1ヶ月ばかり仕事や家事に影響が出る。
鍼治療で治らないかということだった。

治療をしながらお話を聞いたのだが、お子さんの将来のことでかなりの悩みがあり、それがストレスとなっているようにお見受けした。この方にも手根管症候群の治療と合わせて、冷えの治療と、ストレスの治療を行なった。初めの2回は一週間あけて、その後は月一での治療だったが、3回目あたりから痛みやシビレが改善していつの間にか消失した。鍼の治療が気に入られたのか、その後もストレス解消にと月一ペースで通ってこられている。ここでも鍼の全身治療が功を奏したように思う。

この二人の患者さんの治療の経験から、私は、手根管症候群とストレスとの関わりを強く思うようになった。そんな馬鹿な思う人もいるだろうが、西洋医学の分野でも、最近になって腰痛のほとんどの原因が脳にあるのではとの説がでてきたりもしている。あながち突飛な発想ではないと思っている。

手根管症候群というと興味深い話がもうひとつ。
これはどこかで聞きかじった、いや、雑誌かなにかで読みかじった(?)話だから数字などの記憶はアバウトであることは許していただきたい。

アメリカの保険会社の調査結果によると、手根管症候群の場合、鍼灸治療で治癒するまでの費用の平均は約10万円。これに対して外科手術の平均費用は約90万円。したがってその差額は約80万円だという。アメリカには日本のように国民皆保険の制度はないから、人々は民間の保険会社の保険に加入することになる。当然のことながら、保険会社としては高い治療費は払いたくないから患者に鍼灸治療をすすめることになる。

なんでも全米には約200万人の手根管症候群の患者がいるらしい。一人当たり約80万円だから、単純計算でも、保険会社にとって差額による収益は膨大な額となることが解かる。かくしてアメリカでは鍼灸がますます盛んになっているのだという。

TPPによって日本の医療制度が崩壊するのではと心配されている。
私も個人的にはTPP反対の立場だが、民間の保険会社の利益追求が鍼灸の発展につながっているというアメリカ発の記事には、鍼灸師としては複雑な思いを禁じえない。

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